つなぎを省いたハンバーグの変化と代替案について

普段は細かな食感のためにパン粉を使用して調理するハンバーグですが、もしパン粉を抜くとどのような違いが生まれるのでしょうか。
本稿では、そのような状況でのハンバーグの特性や、作り方のコツなどについてくわしくご説明します。
パン粉非使用で作るハンバーグの見通し
普通のハンバーグとは異なる結果が、パン粉を使わないことで生じ得ます。
どのような状況になり得るのかを詳しく説明していきます。
より肉感の強い食感
パン粉によって生まれる柔らかさがなくなり、より肉質のしっかりした食感のハンバーグが完成します。
固めの食感を好む方もおり、わざとパン粉を加えないで作ることもありますし、パン粉を使いたくない人は別の粉類で代用を考えることがあります。
肉本来の風味が際立つ
パン粉を使わないため、使用する肉の本来の風味が強調されることがあります。
質の高い肉を使うならそれを最大限活かすためにつなぎ無しで挑戦するのも良いでしょう。
ただし、市販のひき肉を用いた場合には肉の風味が強いことがあり、調味で調整することをおすすめします。
形が崩れやすくなる
パン粉は、混ぜ込んだ野菜や液体の水分を取り込んで形を保つ効果がありますが、それがないと成形が不安定になりがちで、調理中に崩れる可能性が高くなります。
パン粉のハンバーグでのつなぎとしての活用

ハンバーグ作りでは、具材を補うつなぎとしてだけでなく、様々な機能を持つパン粉が非常に重要です。
パン粉が持つ効果を説明します。
結びつける作用
パン粉は乾燥しているため、ハンバーグの肉だねに含まれる余計な水分を保持します。
これを練り混ぜることで、粘りが生まれ、形崩れしにくいハンバーグが完成します。
また、パン粉に含まれる小麦粉成分のグルテンが、肉だねをしっかりと結びつける役割を果たします。
水を加えたときに生じるグルテンのネットワークは、生地に粘りと張りを与えて、ほどけにくくします。
柔らかさとジューシーさの向上
パン粉はハンバーグの水分を保持することで、焼いたときに柔らかくジューシーな仕上がりをもたらします。
パン粉が取り込んだ肉汁は焼いてる最中に流出しにくく、結果として食感が良くなります。
また、パン粉は水分を含むことで更に柔らかくなり、肉だけのハンバーグが持つ硬さもやわらげる効果があります。
量を増やせる効果
適切な量のパン粉を加えることで、肉だねの固さを調整し、ハンバーグにボリュームを与えることができます。
水分(牛乳など)を適量加えることで肉だねの柔軟性を保つこともできます。
しかしながら、パン粉を過剰に使用すると、ハンバーグの主役である肉の味わいが損なわれる恐れがあるため、加える量はちょうどよくなるよう加減が必要です。
代用品の利用
パン粉の代わりに似た効果をもたらす代用品があり、それらを利用することでふっくらとしたハンバーグを作ることが可能です。
上手に仕上げるためにはこれらの代用品の使用を検討しましょう。
代用品を使うにあたり、心がけたいポイントを説明します。
適量が肝心
パン粉を多用するとハンバーグのもつ肉の風味が減り、さらに水分を加える必要が出てくる場合があります。
代用品の多用も同様です。
適切な量を使うことでバランスの取れた風味を楽しむことが可能です。
代用に適した食材を使う
パン粉を使わない場合、他の食材でその役割を代替することは難しいです。
異なる食材特有の保水性や食感があり、単純に置き換えればいいと言う訳にはなかなかいきません。
ジューシーな食感を失わないようにするためには、パン粉の代用として推奨される食材を使うことをおすすめします。
ハンバーグの代替材料とその使い方
ハンバーグで肉だねがばらけるのを防ぎつつ、焼いた際の美味しさもキープするためには、適した材料の選択が大切です。
以下に、そんな材料のいくつかを挙げ、活用方法をご紹介します。
小麦粉のグルテンを利用して
グルテンは、パン作りに不可欠な成分で、ハンバーグにも同様に使えます。
パン粉の代わりに小麦粉を混ぜると、グルテンが形成され粘り気をもたらし、肉だねがしっかりとまとまります。
もちもちの米製品
米や米加工品を使用すると、デンプンが水と結び付いて粘りが増し、肉だねがしっかり形を保ちますし、焼き上がりはもちもちの食感になります。
余ったご飯は冷まして潰してから使いましょう。
量が多くなりすぎないよう、うまく調整してください。
片栗粉で結束強化
片栗粉を使うと、水分を加えて加熱することで粘りが生まれ、肉だねがしっかり固まります。
この方法は、冷めても食感をキープしやすい優れものです。
さらに、焼く前に外側にまぶせば、肉汁を閉じ込めつつソースの絡みも良くなります。
食べ応えのあるおから
おからもパン粉の代用品に使えます。
食べ応えがアップして腹持ちもよくなるのでおすすめです。
おからには生のおからと乾燥のおからがあり、これらを使い分けてみるのもよいでしょう。
お麩でボリュームアップ
乾燥したお麩は肉だねに加えると、水分を取り込んで膨らむことで肉だねがふっくらします。
できる限り細かくしてから加えましょう。
乾燥した状態のときにおろし器ですり下ろしたり、フードプロセッサーで細かくするのがおすすめです。
高野豆腐でジューシーに
パン粉の代替として活用できる高野豆腐の粉末は、保水性が高く、肉汁をしっかり保ちながら豊かな味わいを演出します。
普通の豆腐も使えなくはありませんが、事前に重しを乗せるなどしてできる限り水分を抜いてから使ってください。
長いもによるふわふわ感
長いもをすりおろしてハンバーグに加えると、自然な粘りが生まれ、ふわっとやわらかな食感が実現します。
パン粉の代わりになるため、卵も必要ありません。
ただし、入れすぎないよう気を付けて、最適なバランスを見つけましょう。
ハンバーグの仕上げ方

ハンバーグを作る際のポイントとして、つなぎの使い方が挙げられます。
これはふんわりした食感を作り出す上で重要です。
パン粉を牛乳で柔らかくする?
ハンバーグの粘りを出すために、パン粉を液体で湿らせて使うことが一般的です。
牛乳でパン粉を浸すことで、より柔らかい食感とジューシーさをハンバーグに与えることができます。
しかし、最近のパン粉には既に一定の湿度が含まれており、わざわざ牛乳で浸す必要性を感じない人もいます。
パン粉は水分量によって、乾燥タイプと生タイプに分かれています。
乾燥パン粉は少ない水分で細かい粒子が特徴で、ハンバーグのもとに混ぜると良く水分を取り込んでくれます。
一方、生パン粉は水分を多く含んでおり、揚げ物に使うと外がカリッとします。
生パン粉はもともと適切な湿度を保っているため、普段は牛乳で浸す必要はありませんが、より柔らかい質感を求める時は牛乳浸しが有効です。
開封してから時間が経過した生パン粉が乾燥していれば、牛乳で戻すのがおすすめです。
つなぎの比率
一般的なハンバーグには、挽肉250〜300gに対してパン粉大さじ4、牛乳大さじ4を用い、卵1個を加えます。
パン粉と牛乳は通常同量で使われます。
これらの量を調整することによって、硬さや柔らかさを調整できますので、お好みに合わせて調節してみてください。
混ぜる順序
ハンバーグのタネを練る際は、まず冷たい挽肉と塩を混ぜ合わせることで粘りを出します。
塩は挽肉中のタンパク質を変化させ、肉の密着とジューシーさを保つのに役立ちます。
挽肉に対する塩の適量は0.8〜1%程度が望ましいとされており、200gならば1.6〜2gが目安です。
塩と胡椒を使う場合は、少し多めにしても問題ありません。
挽肉と塩をよく混ぜたら、次に卵を加えて混ぜ合わせ、最後につなぎの材料を加えればハンバーグのタネの完成です。
世界と日本のハンバーグの違いとは?
日本独自の進化を遂げたハンバーグは、海外のものとは一線を画します。
日本風アレンジのハンバーグ
もともと肉だけでシンプルに作られていた「ハンバーガーステーキ」は、日本の食文化の中でアレンジを重ね、つなぎを加えて今のスタイルに育ちました。
海外ではハンバーガー用のパティとして用いられることが一般的ですが、日本ではそれ自体を一品料理として楽しみます。
ファストフードチェーンでは、多くの場合、純粋な牛肉のみでパティが作られています。
海外では「ハンバーグ」がドイツの都市ハンブルクを指すのに対し、日本のハンバーグに相当する肉の塊は「patty」と呼ばれ、これはアメリカで一般的な表現です。
イギリスでの一般的な用語としては、「ハンバーガー」や単に「バーガー」という言葉が肉を使った料理全体を指します。
現在では「Japanese Hamburger Steak」として国際的にも認識され、海外のレシピサイトで紹介されることもあります。
「ソールズベリーステーキ」のように、アメリカではビーフを主材料とした、日本のハンバーグに類似した人気料理が存在します。
ただし、ピーマンやマッシュルームなどの野菜やキノコを多用する一方で、パン粉は使用しません。
パン粉を加えない海外のハンバーガーパティ
海外でのハンバーガーパティの製作では、パン粉を加えることは一般的ではありません。
それでも、食感の改善やボリューム感を出すために用いることもあるため、絶対に使わないわけではありませんが、肉の風味を活かすため、パン粉を使わないレシピを好む傾向があります。
パン粉を使わないハンバーグの結合方法は?

パン粉のような一般的な結合材料を使わない場合、どのようにしてハンバーグをまとめればいいのでしょうか。
塩の役割
塩はただ味を整えるだけでなく、ハンバーグが形を保つ上で重要な役割を果たします。
タンパク質を結合させて固まりやすくすることで、ハンバーグをしっかりとまとめ上げ、ほどけにくくします。
また、肉を焼いた後、肉汁を逃がさずジューシーに保つためにも塩は必要不可欠です。
卵の作用
卵は結合材料として重要であり、特にその凝固機能がハンバーグの形をキープするのに役立ちます。
卵黄は油脂分と水分をうまく結びつける乳化作用があり、卵白には練り混ぜた際に生じるミートのつながりを強固にします。
これにより、肉汁が流れ出るのを防ぐとともに、独特の風味とコクを加えます。
卵の代わりに風味を出すための調味料はありますが、卵のように結合させる力はありません。
牛乳の代替品
牛乳はハンバーグを柔らかく、ジューシーにするために用いられますが、粘着力には乏しいため、それに代わるものが求められることもあります。
豆腐や豆乳、水に溶かした片栗粉など、他の材料も同様の目的で使用できます。
肉の質感をやわらかくし、臭みを抑える効果がある上、焼き上げた時のジューシーさに貢献します。
野菜の使用
玉ねぎはハンバーグによく使われる具材で、味わいのまろやかさを増す働きがあります。
しかし、過多な水分によってハンバーグが崩れるリスクがあるため、加える量は考慮する必要があります。
加熱した玉ねぎは甘みとコクを加えてくれますが、他の野菜やきのこを使用すれば、さらに様々な食感を楽しむことができます。
自家製ハンバーグの極意
ジューシーなハンバーグを求めるなら、原材料の準備から焼き方に至るまで、小さなコツが重要です。
冷蔵で保つひき肉
肉は調理する直前まで冷蔵庫で保管しましょう。
室温が高いと、肉の脂が溶けハンバーグが崩れやすくなり、焼いた際にも肉汁が逃れてしまう恐れがあります。
夏はエアコン、冬は暖房などを調整し、適度な温度を保つことが大切です。
混ぜ方に工夫を
混ぜすぎると肉汁が減り、ハンバーグが硬くなりますが、適度な混ぜ方によって食材が均一になり、焼き時に肉汁が外に出るのを防ぎます。
理想の状態は、生地が少し粘りを見せ、手で押すとその形を保つくらいです。
さらに、手の暖かさが肉に影響を与えるため、混ぜる前に手を冷やしたり、ヘラやスプーンで混ぜたり、氷水で温度を下げたりするといいでしょう。
生地を休ませて旨味を
こねた生地は一定時間休ませると、より旨味が増し、柔らかな仕上がりになります。
その際、生地はラップをして冷蔵庫で保管しましょう。
適切な休ませ時間は1~2時間です。
この休息を成型する前に取り入れることで、焼き時の割れ防ぎになります。
気泡はしっかり除く
成形の際には生地の内部の気泡を抜くのが大切です。
これによりハンバーグが割れにくくなり、肉汁が適切に保たれます。
「キャッチボールのように」という表現がよく使われていますが、生地を片方の手に乗せて反対の手で数回軽く打ちつけることで気泡を抜くことができます。
このとき、手に少量のサラダ油を塗ることで、生地が締まりやすくなります。
やり過ぎに気を付け適度に行い、理想的なハンバーグを目指しましょう。
サイズを適正に
美味しいハンバーグを作成する際には、サイズがポイントになります。
大きすぎると内部の空気を抜きにくくなり、加熱が不均一になることで形崩れや中心部がきちんと焼けないなどの可能性が高まってしまいます。
適切な大きさは、手の平に収まるほどで、厚さはだいたい1.5センチから2センチが理想です。
厚みと形を調整
中央が厚くなると、熱が通りにくくなるので、中心を少し凹ませて火の通りをよくすることが一つのやり方です。
ただしその必要は必ずしもなく、平らな形状にするだけでも、均等に熱を通すことが可能です。
焼く時は集中
加熱の仕方にも大事なポイントがあります。
低温で長時間調理すると、肉汁が抜けてしまってハンバーグが乾燥してしまいます。
肉の外側を中火でしっかりと焼き付けた後は、低温でゆっくりと内部を加熱するのがコツです。
強火で焼くと表面が焦げやすくなるため、火を強める際は様子をこまめにチェックしましょう。
フタの活用でふっくら
フタの使用も大切です。
フタをすることで水分が逃げるのを防ぎ、全体を均等に加熱できる蒸し焼きにします。
フタがなければアルミホイルを使って代用することもできます。
この方法なら、遠赤外線の効果で熱がハンバーグの内部にまでしっかり届き、美味しく仕上がります。
また、調理時間も短縮できるでしょう。
これらの小さなコツを押さえながら、ご家庭で本場の味をお楽しみください。
パン粉がなくてもハンバーグは作れる
パン粉がない時でも、ハンバーグが作れること、そして様々な代用品を紹介してきました。
突然ハンバーグが食べたくなっても、これでもう安心ですね。